千葉地方裁判所 昭和44年(モ)489号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【判旨】
治助の遺言に対する遺留分減殺請求
(一) 債務者各自は、昭和四三年七月一九日しづの相続人延枝に対し、同年七月一八日、しづの相続人相債務者に対し、それぞれ、治助の遺言による全財産のしづへの遺贈について、遺留分減殺の意思示をしたことは当事者間に争いがない。
(二) もつとも、<証拠>によれば、(1)、債務者正悟は、本件物件及び第三物件目録、第六物件目録1、第七物件目録の各物件を治助の遺産(総価額六、六九三万九、〇〇〇円)と主張し、遺留分はその六分の一であるとして、その価額一、一一五万六、五〇〇〇円に相当する物件として、第二物件目録1、2、7、16乃至24の物件について遺留分減殺請求権を行使する旨を、(2)、債務者平悟は、同様、同人の遺留分としての一、一一五万六、五〇〇円に相当する物件として、第二物件目録3、第六物件目録1の土地、第二物件目録9、10、25、29、30の物件について遺留分減殺請求権を行使する旨の、各意思表示をしていることが認められる。
(三) 債務者等は、当初遺留分減殺請求としては、前項のとおり、遺産の一部を減殺の目的物件として選択特定して、その遺留分に相当する物件について、権利を主張していたが、後にこれを改め、総遺産の各物件の六分の一として、その割合的な遺留分減殺請求の主張に改めたことは、訴訟の経過から明白である。
本来、遺贈の目的物である不動産が数個ある場合、遺留分権利者は減殺し得べき割合によりその目的物の一部物件を適宜選択して、同物件について遺留分権を主張し得ることは、従前の学説、判例も認めるところであり、債務者等は、これに従つて減殺請求の意思表示を行つたものと推測される。然し、これに対しては批判があり、減殺請求者が選択することはできず、目的物件数個の全部についての遺留分割合により受遺者と共有関係にたつものとの説もあり、債権者も上記行使方法に疑問を呈していたものであつて、債務者等は、その後、後説に従つて、上記の割合的主張に改めたことが推測され、もともと、遺留分の減殺請求をする物件を選択する前提として、治助の遺贈により債務者等の遺留分各六分の一が害されたものと主張し、総遺産を列記して、そのうちの六分の一に該当する物件として、上記物件を特定しているものであり、六分の一の割合により減殺する趣旨は明確にしているものである。
ところで、遺贈不動産が多数ある場合の遺留分減殺請求にあたつては、各不動産が家屋、宅地、農地等の多岐にわたり、その利用状況、地理的条件、必要度もそれぞれ異り、その価格についても確定的な基準をとり難く、当事者の選択の利害が対立しているときは、遺留分権利者の一方的な選択により、遺留分減殺の日的物件が確定してしまうと解するのは相当ではなく、このような紛糾を避けるため、遺贈不動産の全部について(各一個は不可分)、各遺留分割合をもつて減殺請求権を行使することは、当然許されるものと解され、本件においても、上記のとおりの遺留分減殺の意思表示の内容形式を前堤として、具体的物件についての主張を改めて、遺贈物件の全部についてその割合的主張とすることは、許されるものと解され、当時その趣旨の減殺がなされたと解することができる。
(大内淑子)